世界経済の政治的トリレンマ説とは、ハイパー・グローバリゼーション、民主主義、国民国家の3つを同時に維持することはできず、2つを選ばなければならないという世界的な経済学者ダニ・ロドリックの説である。近年の反グローバル化などの動きを説明するためにトリレンマ説が援用されることが増えている。英国のEU脱退は民主主義と国民国家の選択と言えるし、中国はハイパー・グローバリゼーション(疑問があるが)と国民国家を選択しているといえよう。ロドリックは、EUは民主主義を維持するのであれば、政治的統合に乗り出す(国民国家の断念)か経済統合を後退させねばならないと主張している。国民国家は不可欠であり、その役割は増大している。民主主義の維持は言うまでもなく、不可欠である。そうなると断念すべきはハイパー・グローバリゼーションとなる。
ロドリックはハイパー・グローバリゼーションに反対しているが、グローバリゼーションには反対していない。たとえば、WTOには反対しているがGATTには賛成している。この意見には異論があるが、行き過ぎたグローバル化ではなく、「賢明なグローバル化」が望ましいことは賛成が多いだろう。問題は賢明なグローバル化とは何かである。それは、対象分野、国の置かれた状況や時代によっても違うだろうし、グローバル化の進め方(スピードや方法)にもよる。アジア通貨経済危機、世界金融危機は金融の行き過ぎた金融グローバル化(自由化)が大きな要因となっていた。
賢明なグローバル化の観点で注目すべきは、経済の安全保障である。機微や新興技術技術の自由な移動は自国の安全保障に大きな問題を生じさせる恐れが大きくなっている。民生用の多くは新興技術は軍事に転用できる軍民両用技術だからだ。
そうですね。中国をデカブリングしようとしている動きは、国民国家と民主主義を選び、ハイパー・グローバル化をすてる動きともとれます。その例として、サプライチェーンの見直しを先の2プラス2で日本に迫ってきました。トリレンマの具現化と思います。
トランプはアメリカファーストで文字通り国民国家を強く打ち出し、グローバル化を抑制しました。ただ、その方法は乱暴で国際ルールを無視したと思います。バイデン政権も国内優先でTPPには当分戻らないといわれます。国民国家、民主主義を優先してハイパー・グローバル化は抑制するのではないでしょうか。
トリレンマとはいいですね。囚人のトリレンマ、国際金融のトリレンマ(為替の安定、金融政策の独立、自由な資本移動)などなど。
この世界経済の政治的トリレンマ説を理解するには、ハイパー・グローバリゼーションと国民国家の2つの定義を確認する必要があると思います。前者の原語は文字通りHyper-globalization、後者のそれはNational sovereignty、国家主権とも訳されています。
日本を除くアジアは民主主義を棄てて、他の2つをとる傾向にあると思われます。アメリカはどちらへ向かうと思われますか?