米中対立が激化している。2018年に貿易戦争として始まった対立は経済覇権・技術覇権をめぐる対立にエスカレートしている。バイデン政権は中国を最大の競争相手とみなすインド太平洋戦略を昨年2月に発表し、10月には先端半導体の対中輸出を禁止するなど分断(デカップリング)を強化している。米中対立は民主主義と専制主義の対立とみなされているが、本質はインド太平洋そして世界の覇権をめぐる対立である。キッシンジャーは、アジアに覇権国が出現することを防ぐことは1世紀以上続いている固定した米国の政策であるとのべている。米国が日本を仮想敵国とするオレンジ計画を作ったのは日ロ戦争の直後だった。バイデン政権のインド太平洋調整官のカート・キャンベルは、米国はアジアに支配的な覇権国が出現することを防ぐために外交的、経済的、軍事的手段を駆使する」と論じている。そして、今出現しつつある覇権国は中国である。
米中は覇権を争う大国間競争関係にあるというのが米国の認識であり、トランプ政権以降の国家戦略文書に明快に書かれている。中国の成長率は低下しつつあるが、米国よりは高い成長率が続くであろう。したがって、米中対立は長期化するのは確実だ。米ソ冷戦は約40年続いたが、米中競争も同様に極めて長くなるだろう。また、仮に中国が民主化しても米中の対立は収まらない。民主化しても中国は経済大国、軍事大国であることは変わらないからだ。
米ソ冷戦との違いは、米中間の経済関係が緊密であり、相互に依存していることだ。米中対立が進む中、中国の貿易統計によると米中貿易は2021年に過去最高となり、米国の貿易統計によると2022年に過去最高になる見通しという(日経新聞2023年2月8日付け)。米国多国籍企業の中国での売り上げは世界3位でアジアでは1位である。中国との経済関係の全面的な分断は非現実的で不可能だからだ。米中は対立と依存、競争と協力が両立する関係が続くと考えられ、一面的にみるべきではない。
世界の警察官も名だたれですね。
ASEANでは、米中対立を民主主義と専制主義の対立とはみていない。フィリピンの植民地支配とそのための戦争(フィリピン人が約100万人亡くなったと言われる)、ベトナム戦争での北爆の記憶、大量破壊兵器がなかったイラク侵攻、ガザ侵攻を続けるイスラエル支援など米国の2重基準(ダブルスタンダード)を忘れていないかただ。
「中国が民主化しても米中の対立は収まらない」その通りです。石川幸一先生、的確な表現です。かつて日本はアメリカの仮想敵国であり、太平洋戦争で叩かれました。その後、ジャパンアズナンバーワンが出版された頃、次の経済大国・日本をジャパンパッシングで叩きました。
要は自分より強い国がアジアで出現するのは困るのでしょう。なぜ対立、コンフリクトが起こるのか。深く考えてみたいです。