日本の終戦記念日が明けた16日、6000キロ離れたアフガニスタンの首都、カブールが陥落した。8月末までにアメリカ軍の完全撤退をバイデン大統領が表明したあたりから、アフガニスタンはイスラム原理主義のタリバンの手に落ちるとはわかっていた。だが、あまりにも早すぎる。
いったい、何があったのかと国際放送に目を凝らす。その時、頭をよぎったのは、私が若かったあの頃、サイゴン陥落の再現だ。でも、違う。混乱はあるが、ガニ大統領、各国大使館員の出国をみていると、いかにも準備されていたかのようだ。政府軍に賄賂、汚職が蔓延し、国軍としての士気も低かったのだろう。もはや、これまでとアメリカは匙を投げたのかもしれない。
タリバンはもともとアフガンに侵攻するソ連軍と戦い、後にロシアを牽制するためにアメリカが育てた組織だ。皮肉にも、9・11で同時多発テロを起こしたアルカイダをタリバンが支援していた。20年前とはいえ、飼い犬に噛まれたアメリカの世界戦略は、何ともチグハグであったと言わざるをえない。
さて、カブール陥落がもたらす意味について、もう少し考えてみたい。これが国際情勢の大きな転換となるかも知れない。非公式ながら、タリバンと友好関係にあるのが中国だ。もともとイスラム原理主義の勢力は中国の火薬庫である新疆とつながっており、中国にとっては複雑な相手である。しかし、中国の野心的なグローバル化事業「一帯一路」の要衝路にあるアフガニスタンは極めて重要な地域となろう。
アメリカは西太平洋に戦力を移すため、アフガニスタンから撤退する政策転換をとったともされている。安倍前首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」を後押しするためもあるだろうが、アメリカの失政が再び繰り返されるような気がしてならない。カブール陥落が今後の国際情勢にどう影響していくのか、日本の方々にもぜひ考察して欲しい。
(カブールにあるアメリカ大使館の屋上から脱出する時の市内の様子)
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