有識者調査で判明した重要なトレンドはASEANの存在感あるいは重要性の高まりである。経済的な影響力ではASEANは16.8%で第2位、米国を上回っている。政治的戦略的影響力では20.0%で米国(25.8%)に次ぐ第3位である。ASEANのGDPは世界で6位だが、数年以内に日本を抜くと予測される。中国、米国、日本は、ASEANとのパートナーシップを最高レベルの包括的戦略的パートナーシップに相次いで引き上げている。こうした経済的および戦略的重要性の高まりがASEANの有識者の意識に反映していると考えられる。また、自由貿易の主導国として最も信頼する国・地域としてASEANは29.7%として最高の評価となっている。ASEAN自由貿易地域(AFTA)の自由化率は98%を超えCPTPPに匹敵する高さであり、RCEPを提案し交渉を主導して調印発効にこぎつけたのはASEANである。こうした自由貿易へのイニシアチブが評価されたと考えられる。
一方でASEANの懸念として、遅く非効率的な意思決定により重要な政治的経済的な課題に対応できない(ミャンマー問題、南シナ海領域問題などと考えられる)ことが指摘されている。着実な経済発展を持続し、ASEANを中心とする東アジアの地域協力(ASEAN中心性)を推進するとともにASEANの改革を進めることが課題である。