自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)が注目を浴びている。日米豪印の4か国によるクアッド(QUAD)に加え、仏、独、オランダなどがインド太平洋戦略を発表し、仏独英はインド太平洋に艦船を派遣する。ASEANも独自のインド太平洋構想(AOIP)を発表した。バイデン政権の米国はインド太平洋を中国との「競争」の舞台と位置づけ、トランプ政権の厳しい対中外交姿勢を継続している。
インド太平洋構想は日本発の壮大な外交戦略であり、そのルーツは2007年8月のインド国会における安倍総理の演説「二つの海の交わり」である。「太平洋とインド洋が自由の海、繁栄の海としてダイナミックな結合をもたらし、従来の地理的境界を突き破る拡大アジアが明確な形を現わしている。これを広々と開き、豊かに育てていく力と責任が日本とインドの両国にある」「日本とインドが結び付くことにより、拡大アジアは太平洋全域にまで及ぶ広大なネットワークにまで成長する」という趣旨の演説でインド国会で絶賛された。演説はインドの偉大なヒンドゥ―教指導者ヴィヴェーカーナンダの「異なる場所から流れてきた異なる水流はすべて海で交わる(The different streams, having their sources in different places, all mingle their water in the sea.)」という言葉で始まっている。インドには「異なった河流の水の合する地点は神聖である」という伝承があるという(鈴木美勝「日本の戦略外交」ちくま新書、2017年)。
日本のFOIPは2016年の第6回アフリカ開発会議の安倍総理基調演説で発表された。「太平洋とインド洋、アジアとアフリカという2つの海、2つの大陸の結合が世界に安定と繁栄をもたらすとして、力と威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として豊かにする責任を日本が負い、アジアからアフリカに至る一帯を成長と繁栄の大動脈にする」という壮大な国際戦略構想である。このFOIPがトランプ政権に採用され、豪州やインドもインド太平洋戦略を相次いで発表し、欧州諸国も参加しつつある。今やアジア外交の「一丁目一番地」に位置するインド太平洋構想であるが、そのルーツにはインドで生まれた深い思想的な意味が背景にあることを想起すべきであろう。
FOIPについて、よくまとまっています。陰のFOIP発案者は安倍前首相の外交スピーチライター、谷口智彦氏(元日経新聞)だったと記憶していますが、いかがでしょうか?