韓国はインド太平洋地域の経済大国であり米国の同盟国だったが、インド太平洋戦略とは一線を画していた。
韓国の最大の貿易相手国は中国であり、そのシェアは日米を合計したより大きい。一方でTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備問題では、中国から韓国製品不買運動など厳しい経済的威圧を受けた。韓国は中国に対する忖度から「曖昧戦略」を取っていたのである。しかし、尹政権は22年12月にインド太平洋戦略を発表した。日本に遅れること7年、米国、豪州、インド、ASEAN、そして英国、ドイツ、フランス、オランダなどの後塵を拝しての発表である。
韓国はインド太平洋戦略で「グローバル中枢国家」としてインド太平洋の自由、民主主義、ルールに基づく秩序、経済発展などに貢献することを謳っている。米韓同盟、米韓日、米韓豪などのミニラテラルな枠組みで連携と協力を進めるとし、韓日関係の改善はインド太平洋戦略の実施に不可欠であり日韓関係改善への強い意思を明らかにしている。一方、中国については協力パートナーと位置付けている。韓国のインド太平洋戦略の原則の一つは「包摂」であり、特定の国を対象とすることはなく特定の国を排除することはしないと明記している。米国のインド太平洋戦略は中国を競争相手と位置づけ、中国の経済、軍事的な台頭と脅威への対応策を提示しているが、韓国のインド太平洋戦略は中国をパートナーとしているのである。中国を排除しないという点では、ASEANのインド太平洋構想であるAOIPと同様である。
韓国は「曖昧戦略」から米国、日本、インド、豪州など民主主義国である有志国とのインド太平洋での連携と協力に一歩踏み出したことは高く評価できる。しかし、中国との関係は課題として残る。たとえば、日米豪印のインド太平洋戦略での協力枠組でありQuadに対しては中国はアジア版NATOなどと反発、批判している。韓国がインド太平洋戦略の実施のためにQuadに参加するなど戦略の具体化を中国の反対を押し切って進めることができるかなどが大きな課題となる。インド太平洋戦略の具体的な行動計画は今後発表される。どのような内容か、どう具体化するのかを見ていく必要がある。
(詳細な内容は、「韓国のインド太平洋戦略」国際貿易投資研究所(ITI)調査研究シリーズを参照ください)
尹大統領は訪米に先立ち、「台湾は朝鮮半島と同様に国際問題」と発言しています。これが大きな波紋を及ぼしており、中国が反発しています。尹大統領の歴史認識がどうなっているのか。中韓でどのような認識が行われ、外交関係を樹立したのでしょうか。
日中間では1972年の日中共同声明で次の3項が盛り込まれており、台湾は中国の一部であるという認識が変わっていないことが外務省HPから見出されます。
三、中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。
中韓は第三国同士なので、日本には馴染みにくいですが、東アジアの情勢を理解するためにも、知っておくべきかなと思います。