「アジアは一つ」であることは理想というよりも目標というほうが適切である。すでに「一つになる」動きが始まっているからだ。それは経済の分野である。各国の主権を維持しながら経済的な統合あるいは連携を進めるのであり、ASEANは2015年に経済共同体を創設、この目標を実現しつつある。ASEANの中では物の貿易が自由化され、サービス貿易、投資、熟練労働者の移動なども自由化を進めている。
経済統合が最も進んでいるのは欧州であり、EU(欧州連合)を創設している。EUでは物の貿易、サービス貿易、投資、資本の移動だけでなく、域内を自由に移動でき、全ての国ではないが共通通貨ユーロまで導入している。EUとASEANでは経済統合の原則とレベルが違っている。EUは市場統合では国家主権をEUに譲渡しているが、ASEANは国家主権を堅持している。EUは経済統合のモデルであり、目標と考えられていたが、ギリシア危機、難民への反対、英国の離脱、反EU政党の伸長など多くの問題が噴出している。EUの統合は行きすぎだという意見も強まっている。ASEANはEUをモデルとは考えていない。サービス貿易、投資、資本の移動には制約が残され、人の移動も単純労働者は対象としていないし、通貨統合も目指していない。ASEANの多様性と大きな経済格差を考慮して、時間をかけて段階的に無理せず経済統合を進めてきた。ASEANの経済統合の目標やレベルは日本政府の進めているEPA(経済連携協定)と類似している。ASEANの経済統合は、アジアの経済統合そして途上国の経済統合のモデルと言ってよいだろう。
なるほど、途上国の経済統合ですね。これはアジアに適したモデルだと思います。
先進国主導の経済統合は民主主義を含めて政治とセットになっていたから、アジアの民族、政治制度の多様性を考えると無理があったと思います。なら、日本が主導すればいいかと考えると、これも難題です。やはり、途上国主導がひとつの答えなのかもしれません。