日本のGDPが2023年にドイツに抜かれ世界4位となったことは大きく報じられた。ドル表示の名目GDPであり、円安が要因となっている。日本のGDPは2010年に中国に抜かれ世界3位となっているが、今後数年以内に
インドとASEANに抜かれると予想され、2020年代に世界7位となる可能性が高い。円安が是正されれば追い抜かれる時期は先に延びるが、成長率が違うため時期の問題である。ASEANは2030年ころには日本と並ぶとみられていたが予想より早く逆転されてしまいそうだ。1980年代には世界2位だった一人当たりGDPは今や世界34位であり、来年韓国や台湾に抜かされる可能性が高い。
小田部正明早稲田大教授が世界経済評論2024年3・4月号に掲載した論考で、物価水準を考慮した購買力平価(PPP)による一人当たりGDPの変化(世界銀行データ)を紹介している。それによると、日本は2000年の3.6万ドルから2022年に4.2万ドルに22年間で16%上昇している。同じ期間にドイツは3.5万ドルから4.3万ドルに23%、フランスは4.0万ドルから4.6万ドルに15%、米国は5.0万ドルから6.5万ドルに30%、中国は0.3万ドルから1.8万ドルに約600%増加した。韓国は2.1万ドルから4.5万ドルに210%増加し日本を超えている。日本の上昇率はドイツやフランスとは大きな差がないが、米国の半分であり中国や韓国に比べると大きな差がある。
小田部教授は人口問題についても触れており、世界の主要国で日本だけが人口が減少していると指摘している。2000年から2022年の間に日本の人口は1.27億人から1.25億人に減少したが、ドイツは0.82億人から0.84億人に、米国は2.82億人から3.33億人に18.1%増加している。韓国は0.47億人から0.52億人に10.6%増加している。合計特殊出生率をみると、日本の1.33に対して中国は1.28、韓国は0.84と日本の1.33を下回っている。人口を維持するのに必要な合計特殊出生率(置換水準)は2.1であるが、置換水準を下回り、日本の合計特殊出生率を下回る国でも人口が増加している。その理由は移民あるいは長期滞在外国人の増加である。小田部教授は外国生まれの長期滞在者の人口に対する割合を移民率と呼んでおり、2020年の移民率は日本が2.2%に対し米国は13.7%、ドイツが16.3%である。韓国の移民率は2020年は2.2%と日本と同じだが、2022年には4.4%に急増している。
人口の減少は国内市場と内需の縮小、労働力不足による供給力の制約、社会保障費の増加による財政負担増などから経済成長の制約要因となる。日本経済の停滞は生産性の低下が大きな要因であり、デジタル化や新しい成長産業の生成などが不可欠であるが、人口減少は重くのしかかっている。小田部教授の論考は日本経済の再生を考えるうえで示唆に富んでおり、一読をお勧めしたい。
財界のリーダーが円安のためだから一喜一憂する必要はないと発言していた。重要なのは、
日本のGDPの伸び悩みは長期トレンドということだ。一喜一憂ではなく、大いに憂いて新産業の育成、生産性の向上、高度外国人材導入などに現下に取り組むべきだろう。後進国から先進国になった国は日本、先進国から後進国になった国はアルゼンチンといわれたが、後世に再び後進国に戻った国は日本などと言われかねない。
消滅可能性都市を見ると、日本政府はあまりにも無策だと思います。
60代以上の日本人、その多くの人が抜かれていることを信じていないんですよね。要は変化にうとく、茹でガエルになっているのです。熱中症になっていることにも気づいていないように
英国病、日本病と言ったところか?