中国では2021年4月26日から全国人民代表大会常務委員会で「海南自由貿易港法」なる法律の2回目の審議が始まりました。2020年12月には、1回目の審議が行われ、その後、意見公募をした上で修正して作成された第2稿(全57条)が今回審議されています。
審議中であるため、今後条文の内容は変更になる可能性はありますが、海南島全域に海南自由貿易港ができ(第1稿第2条)、概ね貿易、投資および関連する金融、税関、海事、税務などについては独自の規制となる見込みで(第1稿第6条第2項)、生態の維持と環境保護が優先され、クリーンな発展、汚染防止を行うことも義務付けられています(第1稿第5条、第32条)。そして、税関の公共衛生安全、国境の生物安全、食品安全、生産品の品質の安全の強化も謳われています(第1稿第12条第2項)。これらの強化は最近の中国共産党の方針でもあるので、条文にも取り込まれるのは当然ではありますが、このような特定の分野での規制が強い状態での自由貿易港がどのようなものになるのか、また実際に公布される法律がどのようなものになるのか注視したいところです。
<執筆者紹介>
高橋孝治/環太平洋アジア交流協会研究員・立教大学アジア地域研究所特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)、国会議員政策担当秘書有資格者。中国法に関する研究や執筆、講演の傍ら、複数の企業や団体にて中国法顧問を務める。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会、2015年)、『中国社会の法社会学』(明石書店、2019年)ほか多数。「月曜から夜ふかし」(2015年10月26日放送分)では中国商標法についてコメントした。「高橋孝治の中国法教室」を『時事速報(中華版)』(時事通信社)にて連載中。
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