2023年1月に米国の戦略国際問題研究所が台湾有事のシナリオを発表した。24のシナリオがあるが、ほとんどのシナリオで米国の介入で台湾を守れるとの結果だが、米台日の被害は甚大となる。基本シナリオでは、米軍は戦死傷者約1万人、自衛隊は約1.5万人、中国は数万人の戦死傷者を出すという。このシナリオは中国軍が台湾に着上陸侵攻作戦を行うのが前提である。堂下元海将のSAPAでの講演によると台湾防衛戦は米軍にとり犠牲が多く引き合わないというピュロス王の勝利になる可能性があり、勝利のコストを引き下げるため政治、戦略、ドクトリン、国防態勢、武器などで対抗措置をとる必要がある(講演資料を参照)。
世界的ベストセラーとなった「半導体戦争」の著者、クリス・ミラーによると、ノルマンディー上陸作戦のような着上陸侵攻は最も実現性が低いという。ほかのシナリオは、①離島である東沙諸島を制圧するという作戦であり、台湾の領土を少しづつ削り取るというサラミ戦術の前例を認めるか台湾と米国は難しい選択に直面する。次に②空の海の部分的封鎖である。部分的封鎖を台湾軍が自力で突破するのは難しく、封鎖を解くには中国の軍事システムの無力が必要となる。③は、中国に夜空爆とミサイル攻撃であり、台湾軍を骨抜きにし台湾経済を壊滅させることが可能である。④として、中国が台北を出入りする船の一部に関税検査を強制し、中国はTSMCに中国に半導体を供給するよう圧力をかけた場合、台湾は拒否できるかと問うている。(クリス・ミラー「半導体戦争」ダイヤモンド社)
堂下元海将は、中国が台湾の外交的孤立、グレーゾーン圧力、経済的強制などの戦略を採用する可能性、海上封鎖の可能性があることも指摘されている。台湾有事については、多角的なシナリオとそれに基づく対抗策を検討するのが喫緊の課題となっている。
中国にとっての将来の危険は「台湾独立」、現在の犠牲は何かもう少し考えて見たい。