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紛争実質的解決のための典型事例のうち人民法院主導で複数の案件を併合した例について

※本稿において、[ ]は直前の単語の中国語の原文を意味し、初出にのみ付した。



 『人民法院報』2026年2月24日付1面に「最高人民法院が実質的な紛争解決の典型案例を発表[最高法発布実質性化解矛盾糾紛典型案例]」という記事が掲載になりました。これによれば、裁判システムと裁判能力の近代化をさらに推進し、公正・効率的・迅速な紛争解決を求める人民群衆の司法ニーズに応えるため、各地の法院は『裁判業務における質と効率の向上及び実質的な紛争解決の促進に関する指導意見[関于在審判工作中促進提質増効 推動実質性化解矛盾糾紛的指導意見]』を深く貫徹し、当事者の訴訟権を法的に保障するとともに、紛争の実質的解決と一回限りの解決を促進する取り組みを進め、一定の成果を上げているとされています。

 そして、さらに最高人民法院は、紛争実質的解決のための典型事例を2026年2月22日に公表したとしています。ここでは、この事例のうち一つを見てみましょう。

 

【事例】2021年2月から2024年8月にかけて、天津市の甲設備設置会社は天津市の乙不動産管理会社からの委託を受け、住宅団地の階段補修や玄関ドア交換など計43件の小規模修繕工事を順次完了させたが、不動産管理会社が一部代金を未払いとしたため、その支払いを求めて人民法院に提訴した。

 

【人民法院の結論】天津市和平区人民法院は受理段階で、計43件の修繕工事は異なる契約関係ではあるものの、法的な争点は双方の継続的な業務提携に起因し、当事者は全て同じで、法律関係の性質も同一で、訴訟対象も金銭の請求という同種であることから、併合して審理すれば紛争解決と訴訟コストが削減できると判断した。そこで、当事者の同意を得て43件の紛争を1件として簡易手続で審理した。審理の過程では、双方は請負プロジェクトの完了状況及び決済金額について異議がなく、支払い計画のみが争点であることが確認された。管理会社は資金繰りが厳しいとして分割払いを希望し、設置会社は早期の代金回収を望んでいた。担当裁判官は矛盾の本質を捉え、「全紛争の一括解決」を目標に、複数回の調停を実施し双方の権益均衡点を探った結果、最終的に全43請負案件について包括的調停合意が成立し、管理会社は4回に分けて全額を支払うが、いずれかの期日に債務不履行があった場合、設備会社は未払い全額について強制執行を申請できるという結論となった。この事案は受理から調停成立まで15日間で完結した。

 

【典型案例とする意義】第一に、事情に応じた併合審理により、紛争の集中的かつ効率的な処理を実現した。人民法院は立案段階で一連の紛争の関連性を積極的に把握し、双方の43件の関連紛争に対し併合審理規則を適用した。同種紛争の分割処理による手続きの重複や裁判の矛盾などを回避すると同時に、当事者の訴訟負担を軽減し、審理期間を短縮した。手続きの集約化により司法資源の効率的な配分を実現した。

第二に、核心的争点に焦点を当て、関連紛争の一括解決を推進した。人民法院は実質的な紛争解決を目標に、43件の請負プロジェクトに関わる争点を包括的に審査し、一体的に処理した。法解釈と理屈の提示を通じて、全プロジェクトを網羅し、権利義務が明確で、執行可能性を備えた包括的調停案の合意形成を促し、真の意味での「事件解決と問題終結」を実現した。これにより商事関係を迅速に修復し、複雑な現実紛争解決における司法の知恵と責任感を示した。

 

 ここにある通り、全部で43件の代金請求を1件の調停にまとめたのは非常に効率的なことであると考えられます。日本の民事訴訟などでは、当事者の意向に沿う形式で手続きが進み、裁判外で裁判官が和解などを勧めるようなアドバイスをするケースがほとんどです。しかし、このケースの場合、「当事者の同意を得て43件の紛争を1件として簡易手続で審理した」となっており、「当事者の同意」は得るものの、人民法院主導で43件の請求を併合した上で調停で解決をしています。中国の民事訴訟は、職権的性格が強いと言われますが(注1)、まさに人民法院主導の手続きが行われていると言えます。しかし、そのような人民法院主導の手続きであっても、当事者の利益になるように主導しているということです。

 

(注1)高見澤磨=鈴木賢[ほか]『現代中国法入門』(第9版)有斐閣、2022年、304頁。

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