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通話傍受アプリ開発と中国法

 台湾の日本語ニュースサイト「フォーカス台湾中央社日本語版」が2026年5月8日17時37分に「中国の地図アプリAMap、通話内容を中国に送信 国家安全局がリスク指摘/台湾」というニュースを配信しました(注1)。これによれば、台湾当局が「中国製の地図アプリ『AMap』(高徳地図)について、通話内容の中国への送信など複数の情報セキュリティー上の問題を確認したと明らかにした。同アプリを巡っては、数位発展部(デジタル発展省)が先月23日、国家の情報通信の安全に危害を及ぼす恐れがあるとして、政府機関での利用を禁止すると発表していた」と報じています。この問題を巡り、法的に見るとどのような問題があるのか考えてみましょう。

 問題となっている地図アプリを開発したのは中国のようなので、この問題を法的に見るとなると、開発者はこのようなアプリを開発してよいのか、また個人情報を本人の許可なく勝手に収集できるようにしてよいのかという問題を開発地である中国の法で見ることになります。

 第一に、開発者はこのようなアプリを開発してよいのか、という問題については、中国の科学技術進歩法(1993年7月2日主席令第4号公布、同年10月1日施行。2021年12月24日主席令第103号公布で最終改正、翌年1月1日改正法施行)が関連するものと思われます。科学技術進歩法第3条第1項は「科学技術の進歩は、世界の科学技術の最先端、経済を主とする戦場、国の主要なニーズ、そして人々の健康と福祉のために、経済社会の発展を促進し、国家の安全保障を守り、人類の持続可能な発展を推進するものでなければならない」と規定しており、さらに。第5条は「国家は、開発と安全保障を連携させ、科学技術安全保障ガバナンスの能力を強化し、科学技術安全保障リスクの予防と軽減のための制度的メカニズムを改善し、科学技術の研究、開発、応用活動の安全保障管理を強化し、国家安全保障分野における科学技術革新を支援し、国家安全保障を支える科学技術革新の能力とレベルを向上させるものとする」と規定しています。

 中国にとって、台湾当局の通話内容を収集できるということは、台湾当局内部の情報を知ることができるということでもあり、明らかに中国にとっての対台湾の安全保障にとって有利になるということでもあります。そして、見ての通り、科学技術進歩法では、国家の安全保障を守ることは科学技術の進歩の目的でもあるし、奨励されているものでもあるということです。そうすると、中国では科学技術進歩法の下、このようなアプリを開発することは認めるどころか求められているものということになります。

 第二に、このようなアプリで情報収集することと個人情報保護の問題があります。これについては、個人情報保護法[個人信息保護法](2021年8月20日主席令第91号公布、同年11月1日施行)第13条が「個人情報処理者は、以下のいずれかの場合に限り、個人情報を処理することができるものとする。……(3)法令上の義務を履行するために必要な場合。……」と規定し、さらに国家安全法(2015年7月1日主席令第29号公布・施行)第11条第1項が「中華人民共和国のすべての国民、すべての国家機関及び軍隊、すべての政党及び人民組織、企業、公共機関及びその他の社会組織は、国家安全保障を守る責任及び義務を有する」としており、つまり中国人には中国の国家安全義務が法律上定められており、この義務を果たすためなら個人情報保護法上も、本人の同意なく個人情報を収集することも赦されるということになります。

 結果として、中国が地図アプリを経由して、台湾当局の通話内容を送信するようなアプリを開発することは、中国法上も許されるということになります。

 

〈注〉

(1)「中国の地図アプリAMap、通話内容を中国に送信 国家安全局がリスク指摘/台湾」(フォーカス台湾中央社日本語版ウェブサイト)〈https://japan.focustaiwan.tw/politics/202605080005〉2026年5月8日更新、2026年5月11日閲覧。

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