米中両国は5月12日に追加関税を115%引き下げることに合意した。対中追加関税は145%から30%になる。これは、相互関税34%のうち90日停止となった24%を差し引いたベースライン関税10%に1~2月に付加された20%を足したものである。これは大きな合意のように報じられれいるが、他の国はベースライン関税10%が課されており、上乗せ分の交渉を行っており、他の国と同じスタートラインに並んだことを意味する。中国は違法薬物対策に関連して20%が追加されており、他の国より厳しい条件となっている。
145%と中国の対米追加関税125%は貿易ができないレベルの高関税である。トランプ関税の目的には、財政収入があるが貿易ができなければ関税収入は入ってこない。報復関税により米国から中国への輸出もできなくなり、米国の産業にも悪影響を与える。中国からは家電製品、スマホ、衣料品など消費財が輸入されており、高関税により輸入ができなくなったり価格が大幅引き上げになると消費者に大きな損害を与え、中国製の部品の輸入ストップや価格引き上げも同様に米国企業に悪影響を与える。145%という高関税は効果はなく、悪影響が極めて大きく、インフレや景気低迷を招く。
米国は「振り上げたこぶし」をおろすしかなく、対米依存を着実に減らしてきた中国に対して米国は「腰砕け」になってしまった。
トランプ1.0のときに追加関税最大25%は継続しており、対中追加関税は合計55%である。これに24%を加えると79%となり、中国への関税は80%が適当というトランプ発言とほぼ一致する。中国およびASEANへ相互関税は今後の交渉次第だが、対中関税は対ASEAN関税よりも高く、中国からASEANへの貿易投資シフトは続くだろう。
トランプといえばMAGAだったが、今はTACOと呼ばれている。Trump Always Chicken out トランプはいつもびびる の略語だ。関税政策を見ているとピッタリといえる。
外紙は、トランプの降伏と報じている。相互関税上乗せ分の90日停止は、1回目の蹉跌であり、115%引き下げは2回目の後退である。トランプは日本など18か国以外には一方的に関税率を通知するという。詳細は不明だが、4月2日発表の高い関税率から引き下げた関税率になる可能性が高い。これは、3度目の後退になる。1度目は国債金利上昇というマーケットの反応、2度目は中国が動じなかったことと中国からの消費財輸入停止に対する消費者や企業の反応が「後退」の要因だった。3度目も経済関係の実態を考慮するものとなるだろう。トランプ政権は経済の現実に適応・修正せざるを得なかった(負けた)といえよう。