8月7日から修正相互関税が発動された。ASEAN各国の相互関税は多くの国で4月2日発表の相互関税から引き下げられた。カンボジアは49%から19%、ベトナムは46%から20%、タイは36%から19%、インドネシアは32%から19%にそれぞれ引き下げられた。そのほか、フィリピンとマレーシアが19%である。引き下げは交渉の結果であり、ASEAN各国は対米関税撤廃などの代償を払っている。対米関税を撤廃したのはベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、カンボジアの6か国である。そのほか、ASEAN各国は、航空機や農産品の輸入、迂回輸出の規制強化、非関税障壁の撤廃などの約束を行っている。
米国とASEANの相互関税交渉は、圧倒的な経済力(と軍事力)を持つ米国の圧勝とみられている。米国はASEANに対して20%前後の関税を維持し、米国からの輸出は無税である。交渉結果は全くの不平等であり、公正とはいえない。ましてやラオスのような低開発国に対して40%という高関税を維持している。弱いものいじめそのものであり倫理的にも問題である。
米国への輸入品に高関税をかけるのは保護貿易であり、保護された産業は競争力が衰えるのは普遍的な保経済原理である。相互関税で米国の製造業のコストは高くなり、保護により輸入品との競争が和らげば米国の製造業の競争力は確実に劣化する。一方、ASEANは(部分的だが)自由化を行うことになる。自由化を行うと競争が厳しくなり、競争力が強くなるのも普遍的な経済原理である。長期的に見れは、米国の産業は競争力が衰え、ASEANの産業は競争力が強化される。米国は短期的には勝者だが長期的には敗者になるだろう。