豪州のローイー研究所の調査によるとASEANでの一帯一路の大型インフラプロジェクトは中止や遅れ、規模縮小などが多く、多くの問題を抱えている。ASEANでの中国の一帯一路による10億ドル以上の大型インフラプロジェクトは24件ある。内訳は、電力が14件、輸送が10件(うち鉄道が10件)だ。24件のうち完成は8件、160億ドル、完成の見通しが8件、350億ドル、中止が5件、210億ドル、進展の見通しなしが3件、50億ドルである。完成したプロジェクトは件数で33%、金額で21%となる。一方、中止と見通しなしを合計すると件数で33%、金額でも33%となる。
中止や遅れ、規模縮小の原因は、①受入国の政権交代など政治状況の変化、②住民などの反対、③エネルギートランジションである。政権交代によりフィリピンの鉄道プロジェクト3件が中止になり、フィリピンは一帯一路を離脱と報じられている。マレーシアの東海岸鉄道は規模が縮小され、凍結から工事が再開された。また、2件のパイプラインプロジェクトは中止となった。地元住民の反対による遅れの典型例はインドネシアのジャカルタ―バンドン高速鉄道であり、大幅に遅れ建設費は予算を12億ドル上回ってしまった。エネルギートランジションはベトナムの石炭火力発電所の中止などの影響を与えている。
このように一帯一路は様々な問題点に直面している。ただし、完成と完成見通しを合計すると件数、金額とも67%となるし、金額の510億ドルは日本のASEANでの大型インプラプロジェクトの220億ドルの2倍以上である。一帯一路は様々な問題はあるが依然として重要である。