2023年の日本の対中投資は38億ドルで前年比で31.9%の大幅減となった。一方、ASEANへの投資は2.9%と僅かに減少したものの229億ドルで対中投資の7倍の規模である。対中投資は2021年に125億ドルと過去最高を記録したが、2022年は56億ドル、23年は31.9億ドルと減少が加速している。対中投資の低迷は日本だけの現象ではない。2023年の世界の対中投資は1632億ドルで13.7%の減少となっている。ちなみにASEANへの投資は2263億ドルで1.2%の増加である。
対中投資の急減の理由は、①米中対立という地政学的な要因、②米国の対中貿易投資管理の強化(デカップリング)、③不動産市場の低迷など中国経済の先行き不透明性、④中国政治の強権化と外国企業や外国人への管理強化などである。日本の対中投資が大幅減になる一方でベトナム向け投資は28.1%、インド向け投資は23.0%拡大した。中国の地政学的リスクの高まりからリスクが低く生産コストも低いベトナムやインドに投資をシフトさせており、フレンドショアリングといえよう。
中国からのインドやベトナムへの投資シフトは現今の地政学的リスクへの対応だが、長期的にみても正しい選択といえる。なぜなら、中国は少子高齢化が急速に進んでいるからだ。出生率が1.4以下は「超少子化」と言われるが、中国の出生率は2023年に1.0と超少子化のレベルとなっている。現在の高齢化率は14.3%だが、2037年には24%、2050年には30.9%と予測されている。一方ASEANの出生率はシンガポールやタイを除きまだ高く、2054年まで人口増加が続き、2100年には中国の人口を上回るとされる。高齢化率も低く、2023年で7.8%である。少子高齢化、生産年齢人口の減少などにより中国の経済成長は鈍化することは確実である。日本が経験してきた高齢化に関連した経済的な影響は中国でもより明確に表れるであろう。一方、ASEANはまだ人口動態の変化が経済成長に悪影響を及ぼす段階ではなく、今後も長期間消費市場および生産基地として発展する可能性が高いのである。
東アジアの成長の中核そしてけん引力は中国からASEANに移りつつあり、そうした基盤となる長期トレンドを地政学リスクが加速しているとみるべきだろう。
今、半導体投資はマレーシアが熱い!経済安全保障で米中が対立する中、マレーシアは中国とも仲がいいし、アメリカからサプライチェーンの要求も押し付けられない。ビジネスは中立がいいね。どちらにも出荷できることが大事です。