相互関税に加えロシアからの原油輸入に対して25%の制裁関税が課されインドと米国の関係が悪化している。また、10%の相互関税からボルソナロ前大統領の裁判の中止を求めて40%の追加関税がブラジルに課された。インドとブラジルに対する追加関税は50%と中国を除くと最も高くなっている。インド、ブラジルとも民主主義国であり、米国の友好国であるとともに米国の対ブラジル貿易は赤字だった。両国とも米国の措置に強く反発している。重要なのはブラジル、インドはBRICSの創設メンバーであり、BRICSを主導する国の一つであることだ。
BRICSは2009年にブラジル、ロシア、インド、中国の4か国で創設され、2011年に南アフリカが参加、2024年にイラン、UAE、エジプト、エチオピア、25年にインドネシアが参加し参加国は10か国となった。また、ASEANのマレーシア、タイ、ベトナムを含む10か国がパートナー国となっている。BRICSが世界のGDPに占めるシェアは25%米国やEUを上回り、世界の原油生産の4割、天然ガス埋蔵量の5割を占めエネルギーでも重要性を増している。
BRICSには2つの流れがあった。一つは反米の動きであり、もう一つは反米を抑え共存を目指す動きである。反米志向は中国とロシアであり、共存を目指していたのはインド、ブラジルだった。しかし、トランプ政権のインド、ブラジルへの追加関税は両国の強い反発を招き、両国は中国との関係、協力を強化している。米国の経済覇権と安全保障の最大の敵(競争相手)は中国である。中国を孤立化させ、世界の主要国から中国を分断させるのが米国の戦略のはずである。トランプ政権の追加関税は敵に塩を送るものであり、利敵行為である。戦略の欠如がこうした誤った政策を生み出しているのだろう。