日本のメディアは、東南アジアでの一帯一路について中国は6割強を履行しなかったと報じている。これは豪州のローイー研究所の調査結果である。同研究所の調査報告を読むと、東南アジアの大型一帯一路インフラプロジェクトの33%が中止になり、33%が実施中(実現見通し)、33%が完成(履行)となっている。現時点で6割強が実現しなかったことはその通りであるが、33%は実施中で完成と実施中を合計すると67%が履行されることになる。これは、日本の東南アジアの大型インフラプロジェクトの履行率とほぼ同じである。
東南アジアの有識者調査でも米中対立で米中の選択を迫られた場合、中国を選択するが米国を選択するを上回ったと大きく報じられた。この報道は正しいが、報告書を読むと76%がASEANの強靭性と一体性を強化と中立を維持すると回答している。米中どちらかを選択するは8%に過ぎない。
中国に不利な情報のみを大きく報道し、重要な関連情報を併せて報じないのは、読者に誤った印象を与えることが懸念される。
日本の新聞やテレビでは、米国の対中関税を30%と報じていた。しかし、トランプ1.0の対中制裁関税(最大25%)はバイデン政権でも継続され、トランプ2.0でも撤廃されていない。従って、米国の対中追加関税は最大55%となる。このことは前からパネディスで指摘していた。3か月たってようやく、先週のテレビ朝日の昼のニュース番組でやっと米国の対中追加関税を55%と報じた。日本のメディアの関係者は基本的なデータを確認しないのだろうか。また、テレビのニュース番組は内容はほぼ同じで登場するコメンテーターもほぼ同じである。こうした重要な問題なのに社内に専門家はいないのだろうか。横並びではなく独自の分析を望みたい。
本日(7月13日)のサンデーモーニングでBRICS加盟国を11と報道していた。BRICS加盟国は10である。こうした基本的なデータを間違うようでは報道内容は大丈夫かと疑念をいだかせる。
また、反米となっていると報じたが、インドがリードし反米色を薄めたとの見方が一般的である。なお、松原氏は習近平が欠席したことをとりあげ、健康不良説や失脚説を説明したのはよいコメントだった。SAPAでは茶話会で詳細に客観データを踏まえて鋭い中国分析に定評がある日暮理事が失脚説を検討している(茶話会ファイルを参照)。
テレビ東京の報道番組で、著名な中国研究者がインドネシアはBRICS参加により中国・ロシア陣営に参加したとコメントをしていた。こうした見解は多く聞かれる。しかし、インドネシア政府の声明では、BRICSに参加したが西側諸国のグループを含めインドネシアは多くの枠組みに参加すると述べられている。インドネシアのプラボウォ政権は全方位友好戦略を採用している。インドネシアは米国主導のIPEFに参加し、OECD加盟とCPTPP加盟を進めている。IPEFに参加したからといって米国陣営に参加したといえないようにBRICS参加は中国ロシア陣営参加を意味しない。インドネシアのBROCS参加は、国際的な発言力強化、南南協力、エネルギーや食糧の安全保障などが目的である。インドネシアを含め、ASEANの国々は歴史的に中立外交、均衡外交が基本方針である。
テレビでの著名なコメンテーターの意見は影響力が大きいだけに正確な発言を期待したい。
サンデーモーニングモーニングに投稿しました。
10月27日のサンデーモーニングで著名な評論家がイスラム教徒が7割を超える国は米国から離れていると発言していた。これは、上記有識者調査の結果によるものだが、米中どちらかを選ぶという回答はイスラム教徒の多い国でも極めて少ないことは説明せず、国民の大多数が反米であるかのようなコメントは聞く人の誤解を招くだろう。正確かつ丁寧なコメントを願いたい。