第2期トランプ政権が発足して一か月を超えた。トランプ大統領は今までの大統領の4年の任期以上の仕事をしたと自賛しているが、世界そして米国内でも混乱が広がっている。トランプ政権によりASEANにどのような影響があるだろうか。
まず、追加関税だ。第一期政権ではASEANには追加関税が課せられなかったが今度は可能性が高い。課せられるのは相互関税になるだろう。次に経済援助が影響を受けそうだ。イーロン・マスク氏率いるDOGEが経済協力を担当するUSAID(国際開発局)を閉鎖したためだ。USAIDはASEANと地域開発協力協定を結び幅広い協力を行っている。つぎにIPEF(インド太平洋経済枠組)による協力も影響を受ける可能性がある。トランプ氏は選挙期間中にIPEFから離脱すると発言していた。IPEF離脱の大統領令はまだ出ていないが、先行きはどうなるか分からない。ASEANはサプライチェーン強靭化、脱炭素などで米国の協力に期待していた。
米国に対する信頼も大幅に低下し米国の影響力は小さくなるだろう。シンガポールの著名研究所ISEASが毎年実施しているASEAN有識者調査によると第一期トランプ政権では米国を信頼しないという回答が5割を上回っていた。第2期政権でも信頼できないという回答が相当増えるだろう。また、米中のどちらを選択するかについては、中国を選択が米国を選択を上回ると思われる。
友好国や同盟国にも脅迫を行い、自国第一で途上国にも関税をかけ、経済援助を削減するる米国は信頼できず、リスクであるという見方が広がることは避けられない。リスクをヘッジするためにRCEPやEUに加えて、BRIGやGCCなどグローバルサウスに接近する動きが強まるだろう。経済連携ではEUとのFTA、GCCとのFTAを結ぶ動きがでてくると思われる。
有識者調査で中国を選ぶという回答が増えても政府レベルでは、米中の間で中立を維持し、両国と掲示関係を維持する均衡戦略は維持されるだろう。中国は最大の貿易相手国、米国は最大の投資国だからだ。