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中国の法定労働時間

最終更新: 2月6日

 日本の法定労働時間は一日8時間まで、一週40時間までです(日本の労働基準法第32条)。これに対し、中国の法定労働時間は、一日8時間、一週40時間です(労働者の労働時間に関する規定 ※1 )。また、中国には、別の法律で労働時間は一日8時間以内、一週44時間以内とする規定もあります(中国の労働法第36条)。中国では、別の法規でより異なる内容の規制ができたとしても、元の法規を廃止しないことが多々あります。そのため、読む法規によって規制内容が異なることがあります。そのため、中国では多くの法規を読み、最も厳しい基準に合わせることが重要になってきます。

 さて、中国の法定労働時間は、一日8時間、一週40時間と述べました。これは一見すると日本と同じということになります。しかし、そのように単純に考えていいものではありません。中国のこの法定労働時間の規定は「一日8時間『まで』、一週40時間『まで』」とは規定されていないのです。これは、中国が社会主義国家であることと関係しています。つまり、社会主義国家では、全ての雇用主は国家であり、どこで働こうとも労働条件は同じ(完全に同じとは言えないまでも、大きく変わることはない)という前提がありました。

 つまり、中国では労働時間については、どの会社で働こうとも労働時間は変わらないという発想が法規の中に入っているのです。すると、中国の法定労働時間の規制は、「一日に働かせることのできる最大の時間」ではなく、「一日に労働者を働かせなければならない時間」ということになります。

 中国憲法第42条第1項にも「労働の権利と義務」について規定があり、中国では労働は権利のみならず、義務の側面もあるのです。日本国憲法三大義務の一つである「勤労の義務」はあくまで宣言的なものに留まっており、働くか否かは個人の自由と解釈されています。これに対し、中国では憲法と労働法によって、「強制労働」の側面があることが否定されていません。

 実際には、中国でも一日8時間未満を労働時間としている会社は多くあるので、事実上は「法定労働時間は一日8時間まで、一週40時間まで」と解釈されているのでしょうが、中国法本来の趣旨に返れば上記のように考えられるという点は重要です。

 中国ではそれまで黙認されていても、政権の都合により突然法を厳格に適用しなければならなくなることがあります。本来の趣旨からは外れた所定労働時間の設定にはリスクもあり、なるべく一日8時間ちょうど、一週40時間ちょうどの所定労働時間を設定する方がよいという点は気を付けておきたいですね。


※1 中国語原文は「国務院関于職工工作時間的規定」)第3条

<執筆者紹介>

高橋孝治/環太平洋アジア交流協会研究員・立教大学アジア地域研究所特任研究員

中国政法大学博士課程修了(法学博士)。法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。中国法に関する研究や執筆、講演の傍ら、複数の法律事務所や団体にて中国法顧問を務める。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会、2015年)。『中国年鑑2019』(共著、明石書店、2019年)ほか多数。「月曜から夜ふかし」(2015年10月26日放送分)では中国商標法についてコメントした。「高橋孝治の中国法教室」を『時事速報(中華版)』(時事通信社)にて連載中。


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