2023年2月15日付の『人民日報』2面には「今年の中央一号文件は、セーフティネットの保持、振興の促進、強い保障を謳う:農村振興の全面推進の「マニュアル」(今年中央一号文件聚焦守底銭、促振興、強保障:全面推進郷村振興有了“操作手冊”)」という記事が掲載されました。
これによれば、今年の中国共産党中央第一号文件は、農村をテーマにしたものであり、強力な農業国家の建設を加速するという目標を置いているとしています。そして、同第一号文件は、農業国家とするためのマニュアルにもなっており、収益の維持、再生の促進などの内容が盛り込まれているという。いわゆる、農村の貧困の改善のために、農村を大規模に改革するというものです。
中国近代史的に見れば、「先富論」で沿岸部ばかりが発展していた中国で、やっと農村の改革が始まったというところになります。ところで、一般的に国家を産業で見ると、農業国家→工業国家→サービス産業国家と移行していくものですが、ここでは「強力な農業国家の建設を加速する」としています。中国沿岸部は、工業国家やサービス産業国家と言っても問題ありませんが「強力な農業国家」をも目標にしているようです。まだ、中国の格差問題を改善するためのリップサービスの可能性もありますが、少なくともこれから中国では農業が大きく進展し、農村の貧困が改善されるほどの経済効果が発生するようです。ここしばらくは中国のアグリビジネスなどチャンスが大きく到来するかもしれません。
「農業国家→工業国家→サービス産業国家と移行」というこの理論は、20世紀の開発経済学で伝統的な見方です。先進国になればなるほど、サービス産業化するという事例ですが、21世紀果たしてこの理論が適用できるのか疑問になってきました。
中国の場合、国家戦略として食の安全保障を目指しているのでしょう。食料自給率を高めていかなければ、他国に依存することになりかねないからです。党中央1号文件は「農業」とした政策立案の背景が読み取れます。超エリート官僚による智力を垣間見た気がします。
高橋研究員、素晴らしいテーマありがとうございます。